シオン(1979年韓国、唐津生まれ)は、絵画を中心に、彫刻、インスタレーションから映像、パフォーマンス、写真まで幅広い制作活動を行っています。絵画では、絵具に加えてスタイロフォームや布地、チューインガムなど様々な素材を組み合わせ、さらにガスバーナーで表面を溶かすといった混合技法を用いて、デフォルメされた人物や髑髏、怪物のようなグロテスクなイメージが極彩色で描かれます。主題の上でも、韓国のシャーマンである巫堂(ムーダン)、現代のポップ・カルチャー、作家自身の日々変化する感情などの要素が、ひとつの画面にまとめ上げられています。表現手法と主題における混沌とした複層性が、シオンの多彩な作品群に通底する特徴だといえます。
本展出品作の新作《審判の日》は、3トン以上もある衣服でできた巨大な波の中に、小型のチャペルや彫刻が設置されたインスタレーションです。シオンは、「巨大な波が示唆するのは、大量消費が引き起こす破滅であり、止めることのできない資本主義社会の姿そのものだ」といいます。その中に据えられた小さなチャペルは、無力な存在のようにも、また、残された救済のようにも見えます。
本作の表現には、ムーダンの装飾に用いられる色彩、ポーランドのカトリック文化、大量消費社会や環境問題など複層的な文脈を読み取ることができます。そこには現代社会の多様性が表れており、同時にシオン自身のこれまでの経験、感情や想いが、生々しくも誠実に反映されています。シオンのシンプルで力強い表現は、個々の価値観を超え多くの人々に訴えかけることができるでしょう。
シオン
1979年唐津(韓国)生まれ、クラクフ(ポーランド)在住。韓国の牧園大学を卒業後、京都市立芸術大学美術研究科で博士号を取得。これまで日本やニューヨーク、香港などで多数の展覧会に参加し、近年はパラソル・ユニット財団(ロンドン)での個展(2019年)など、欧米を中心に活躍。2019 年ヒョンギョンからシオンに改名。