ミッション
グローバル化が拡がる今日、私たちは、人と情報の活発な交流を通じて、他の地域の文化・歴史から多くのものを学び、より多様性に富んだ新しい生活を享受することが可能になっています。このような状況において、新しい価値創造の豊かな源泉であるアートや、それに隣接する創造活動の意義はますます重要になっています。
森美術館は世界に開かれた現代美術館として、「現代性」と「国際性」を追求しながら、多様な地域の先鋭的な美術や建築、デザイン等の創造活動を独自の視座で紹介していきます。とりわけ、日本とアジア太平洋地域における現代美術の重要な拠点として、この地域の美術に目を向け、それぞれ固有の文化的背景を読み解き、そこから生まれる新たな動向を世界の美術の文脈に位置づけることが、当館の役割のひとつであると考えます。
そして、生活の中のあらゆる場面で、より多くの人がアートを楽しめる豊かな社会、すなわち「アート+ライフ」の実現を目指していきます。
館長メッセージ
2003年に開館した森美術館は、東京の「文化都心」を掲げる六本木ヒルズのシンボルです。街づくりの一翼を担うことを目指して創設された、大変ユニークな私立美術館であると言えるでしょう。したがって、その活動は美術館の空間に限定されず、街に住む人、働く人、訪れる人など、広くコミュニティへ浸透すべきであると考えています。
森美術館の多様な展覧会およびラーニング・プログラムでは、体験とストーリーを重視します。美術館や地域という現実の空間で、五感を刺激する実体験を提供し、それぞれの作品の背景にあるストーリーや文脈も含めて理解を深めることで、同時代を生きる作家が創り出した現代アートを多くの人々に届けます。
実際、今日の世界は、政治、経済、社会、文化における異なる価値観や歴史観、急速な気候変動といった課題が複雑に絡み合っています。現代アートはこうした世界を映し出す縮図であり、そのなかでは多様な価値観や思想、アイデンティティに敬意を払うダイバーシティの考え方がますます重要になっています。森美術館は未知の世界と出会う場でもあり、差異にも共感し、楽しむ場でありたいと考えます。
森美術館はまた、世界の近現代美術館コミュニティの一員として、とりわけアジア太平洋地域の主要な現代美術の拠点として、各地の美術館、芸術祭、教育機関などとのパートナーシップを築き、現代アート界全体の活性化と成長に貢献していきます。現代アートを通して私たちが生きる世界をより深く理解し、多様な考え方が共存できる、より良い未来を共に築いていけると確信しています。
2020年1月
森美術館 館長 片岡真実
森美術館 館長
片岡真実(かたおか・まみ)
ニッセイ基礎研究所都市開発部、東京オペラシティアートギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年より森美術館、2020年より現職。2023年4月より国立アートリサーチセンター長を兼務。
ヘイワード・ギャラリー(ロンドン)インターナショナル・キュレーター(2007~2009年)、第9回光州ビエンナーレ共同芸術監督(2012年)、第21回シドニー・ビエンナーレ芸術監督(2018年)、国際芸術祭「あいち2022」芸術監督(2022年)。CIMAM(国際美術館会議)では2014~2022年に理事(2020~2022年に会長)を歴任。