メンバー限定「MAMCメンバーズ・ギャザリング」レポート 〜アーティストを囲んで語り合う夕べ 篠田太郎X片岡真実のトークで二度味わう「ネイチャー・センス展」
森美術館のメンバーシップ・プログラム「MAMC(マムシー)」。その会員を対象にした「メンバーズ・ギャザリング」が2010年8月25日の夜、六本木ヒルズクラブにて行われました。開催中の「ネイチャー・センス展」出品作家の篠田太郎さんと、チーフ・キュレーター片岡真実のトークを交え、和気あいあいとした雰囲気で、夏の夜の出会いを楽しんでいただきました。
会場は六本木ヒルズクラブ。天井に星がきらめく「スターバー」で、篠田太郎さんの作品《銀河》を思い出します。
集まった多くのメンバーの皆さんは、六本木の夜にふさわしく、カジュアルシックにドレスアップしていました。パートナーやご家族、お友達を誘ってきた方や、仲良しグループで参加した方々。メンバー同士顔見知りで、久々の再会を喜んでいる姿もありました。ドリンクを片手に、とても和やかに歓談しています。
館長、南條史生の挨拶が始まりました。
「今日は皆さん、できるだけ知らない方にも話しかけて、知り合ってください。篠田さんのトークが、いろいろな話をするきっかけになるだろうと思います。とにかく楽しんでいただいて、その輪が広がっていくことを願っています」
次に理事長の森佳子による、乾杯の挨拶です。
「いろいろなアートイベントの情報交換の場としていただけると、とても良いなと思います。この会をきっかけに、少しずつアートイベントに足を運んで、そしてファンになっていただいて、活発にお顔合わせをしていただけたら嬉しいです」
会場では、挨拶の言葉に背中を押されるように、近くにいる方に話しかけ、情報交換を始める光景がそこここで見られました。
今回は、編集者/クリエイティブディレクター/京都造形芸術大学教授の後藤繁雄さん、コレクターの宮津大輔さんといったアートの世界でも著名な方々が特別参加され、その周りにも交流の輪ができていました。
イタリアンを中心とした色とりどりの料理を、ビュッフェスタイルで楽しみつつ、会話が弾みます。
いよいよ、篠田さんと、キュレーター片岡のトークが始まりました。
もともと造園を学び、庭師としての仕事も経験した篠田さんですが、彼独特の、身体(ミクロコスモス)から宇宙(マクロコスモス)へと連環する考え方と、それを反映した作品は、どのようにつくられてきたのか。初期から最新作までの画像を見せながら、ユーモアを交えつつ、軽快に、心に響く話を続ける篠田さん。ごく初期から彼の活動を見てきたキュレーター片岡とのリラックスしたトークで、「ネイチャー」のとらえかたや「ネイチャー・センス」の意味についてなど、大いに示唆に富む、興味深い対話を聞くことができました。
トークの後、メンバーの一人が篠田さんに声をかけていました。
「神戸から参加して、すごく感動しました。今まで関西では作品を拝見する機会がなかったんです。」
篠田さん、「日本で展示するのも5年ぶりなんです。東京では6年ぶりですね。ここ何年か、海外での発表だけだったので。観ていただけて嬉しいです」と笑顔でした。
再び歓談となり、篠田さんや片岡を囲んで、トークの感想や、トークを聞いて、改めて展覧会について思うことなど活発に意見が交わされ、会場にはとても生き生きと和やかな空気があふれていました。
特別参加された後藤繁雄さんからは「こういう場がもっと増えるといいですね。かつて茶会は、道具や掛け軸、花を観賞し、意見を交わし、アートや文化について情報を交換する場だったと思うんです。その茶会に代わる場として、美術館が見直されていくといいんじゃないかな」とのご意見がありました。
また「作家の展示を観て、話を聞くだけじゃなくて、ずっと見守っていくサポーターの輪ができるといいのでは。プロジェクトに投資して、作家と一緒に作っていく、一緒に夢を見る。それができたら素敵なことでしょう」という提案もありました。
締めくくりに、森美術館ジェネラルマネージャーの高橋信也から挨拶があり、名残を惜しみながらの閉会となりましたが、まだ開館時間中の美術館へと、急ぎ向かわれる方も。印象深い「ネイチャー・センスの夜」となったようです。
篠田さんとキュレーター片岡のトークの詳細は、ブログをご覧ください。
文:児島やよい(フリーランス・キュレーター、ライター)
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