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ミヤギフトシArtist's Voiceレイナルド・アーンの歌曲「クロリスに」を聞いたことが制作のきっかけでした。バッハを思わせるバロック調のメロディーに、16世紀の詩人による詩。20世紀に書かれたにしては美しすぎる音楽に興味を持ち調べると、ギリシャ神話の花の妖精クロリスが、西の風の神ゼピュルスにレイプされたことで、ローマ神話の花の女神フローラとなった(ギリシャ>ローマへの移行が起きている)ことを知りました。 そこから、クロリス、フローラについて調べているうちに、京橋のケーキ屋が作る「アンブロワジー」(神々の食べ物、という意味で、「クロリスに」にも登場する)という名のケーキ、隅田川とセーヌ川が友好河川という謎の事実、ゼピュルスも登場するモーツァルトのオペラ「アポロとヒュアキントス」、ボッティチェリの「プリマヴェーラ」、プルーストの「失われた時を求めて」など、いろいろな要素がからんだ5章からなる作品ができあがり、それぞれ異なる語り手や歌い手が登場します。 作品の核として誰かが「クロリスに」を歌うということは考えていたのですが、誰が歌うべきなのかずっと分からずにいました。そんな時に沖縄の米軍基地内のLGBT組織が、基地内でドラッグショーを開催したというニュースを見つけました。ドラッグクイーンが、「クロリスに」を歌うとしたら? そう考えて、初めて自分がフェンスや境界といったものにこだわり過ぎていたのかもしれない、と気づきました。境界の向こう側の世界にもまた、境界が存在するのだと。そして、ドラッグクイーンに「クロリスに」を歌ってもらうことで、向こう側の境界について考えるきっかけになるのではないか。ということで、数カ月連絡が途切れ途切れになりながらも交渉して、そのドラッグクイーンを撮影してきました。 2012年から継続している、沖縄における政治やアメリカの存在、そして性にまつわる「American Boyfriend」プロジェクトにおいて、初めて沖縄の米軍兵に会い、撮影した作品となりました。 |
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