遊び心に満ちた寓話的なアプローチで描かれた、南インドの自然や素朴な日常生活の中には、インドの一地方都市を起点に政治経済や文化のグローバルな動向を展望する、N・S・ハルシャの批評的な眼差しを見ることができます。
ハルシャの初期の代表作「チャーミングな国家」シリーズは、マイスールなどを舞台にさまざまな物語が展開します。1990年代初頭の市場開放以降に起きたインドの社会的な変化が織り込まれ、グローバルに繋がる世界経済の影響を示唆しています。
《彼らが私の空腹をどうにかしてくれるだろう》(2006年)では、農地の後ろに世界貿易機関本部ビルが描かれ、国家の成長や子どもたちの空腹を満たすのは、畑を耕す農民か、それとも自由貿易なのかと問いかけます。
《チャーミングな国家》(2006年)では、外国製の農耕機械が農民たちの仕事を奪った事実が暗喩的に描かれています。