セクション解説

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1.前衛の笑い

第一次世界大戦後、近代芸術のエリート主義に対抗するエネルギーとして広がった「ダダ」や「反芸術」の姿勢は、第二次大戦後の様々な前衛芸術運動に継承されました。なかでもジョージ・マチューナスを中心とする「フルクサス」は、パフォーマンス、言葉遊び、ゲーム的要素など、ジョークやユーモアを重視した活動を国際的に展開しました。同時期の日本でも、「ハイレッド・センター」などには芸術の枠組みをユーモラスに利用した活動が見られます。

出展作家:
赤瀬川原平
靉嘔
ジョージ・ブレクト
ロベール・フィリュウ
ハイレッド・センター
スコット・ハイド
ジョージ・マチューナス
中西夏之
オノ・ヨーコ
ジョック・レイノルズ
ウィレム・デ・リダー
塩見允枝子
ベン・ヴォーティエ
ロバート・ワッツ
エメット・ウィリアムス

2.小さな笑い

1990年代以降の現代アートでは、日常的な営みに新しい価値や小さな輝きを見いだそうとする傾向が見られます。芸術と日常を融合する1960年代の試みに通じる小さな革命的意識とでも言えるでしょうか。日常をわずかにずらし、少し違和感を持たせることで、習慣化して無意識になっている私たちの感覚や感性が刺激されます。本章では、映像の逆回転、意味の逆転、ナンセンスな行為の繰り返し、単純さの誇張などによって生まれる小さな笑いをご紹介します。

出展作家:
マルコス・シャーヴェス
磯崎道佳
チョン・ジュンホ
マット・ジョンソン
パトリック・キロラン
木村太陽
倉重 迅
ピーター・ランド
マッズ・リネラップ
トリーネ・リーセ・ネドレオース
ポーンタウィーサック・リムサクン
ウィル・ローガン
ピーター・ローゼル
ロイ・ヴァーラ
渡辺英司
エルヴィン・ヴルム

3.笑いの裏返し

現代の国際的なアートシーンでは、1990年代以降のグローバリゼーションの影響を受けて、ますます多様な文化に出会う機会が増えています。そこでは、異なる文化、社会、信条に対する理解が求められ、同時に自国の文化に対してもより自覚的になります。しばしば自身を取り巻く文化や社会への批判も含め、現在の社会の状況や大きな流れに対して疑問を投げかけるときにも、笑いやユーモアは重要な役割を果たします。

出展作家:
会田 誠
ジェニファー・アローラ&ギリェルモ・カルサデイーリャ
カルロス・アモラレス
タミ・ベン=トール
ブルー・ノーズ
チェン・シャオション(陳劭雄)+小沢 剛
ギムホンソック
チョン・ジュンホ
ティム・リー
ロビン・ロード
鳥光桃代
ワン・ゴンシン(王功新)
ワン・ネンタオ(王能濤)
シスレイ・ジャファ
ジョウ・ティエハイ(周鉄海)

4.逸脱する笑い

現実を越えた想像の世界では、どんなことも可能です。絵画、彫刻、映像、インスタレーションなど、さまざまな方法によってあり得ない風景や物語が描き出され、動物や想像上のキャラクターも活躍し、現実は笑い飛ばされます。しばしば現実と超現実の境界線を視覚や身体感覚を通して考えさせる作品もありますが、これもまたリアルなものとは何かという問いかけだと言えるでしょう。

出展作家:
ジョン・ボック
オラフ・ブルーニング
サイモン・エヴァンス
ギムホンソック
ロドニー・グラハム
カールステン・フラー
今村 哲
磯崎道佳
金氏徹平
ピーター・ランド
クリスチャン・マークレイ
岡山直之
田中功起
エルヴィン・ヴルム
山本高之


マルコス・シャーヴェス
《無題/笑うマスク》
2005年
ビデオ
1分55秒(ループ)
in collaboration with André Sheik (camera) and Leo Domingues (editing)
Photo: André Sheik


会田誠
《日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ》
2005年
ヴィデオ(DVD変換)
8分14秒
Courtesy: Mizuma Art Gallery
Photo: Okada Hiroko


ロビン・ロード
《無題/街灯》
2005年
Cプリント
45×30 cm (×24)
Collection: Tucci Russo Studio per I'Arte Contemporanea, Turin


ロビン・ロード
《無題/街灯》
2005年
Cプリント
45×30 cm (×24)
Collection: Tucci Russo Studio per I'Arte Contemporanea, Turin


ロビン・ロード
《無題/街灯》
2005年
Cプリント
45×30 cm (×24)
Collection: Tucci Russo Studio per I'Arte Contemporanea, Turin


鳥光桃代
《Horizons》
2004年
人工芝、発泡スチロール、PVCパイプ、モーター、ウレタン樹脂


金氏徹平
《White Discarge (Figure)/白の排出(フィギュア)》
2005年
プラスチックフィギュア、石膏、ゴム、ジェッソ、ミクスト・メディア
Photo courtesy: Kodama Gallery, Osaka / Tokyo


山本高之
《スプーン曲げを教える(レッスン1、シャージャアートセンター、アラブ首長国連邦、2003)》
2001年 -
ヴィデオ
7分