TOP PAGE

「アイ・ウェイウェイ展―何に因って?」MAMCナイトリポート

2009年8月4日(火)閉館後に、毎展恒例のメンバーイベント「MAMCナイト」を開催しました。
今回のスペシャルコンテンツは、「アイ・ウェイウェイ展―何に因って?」担当キュレーター片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)によるギャラリーツアーと、アイ・ウェイウェイが深く関った北京オリンピック・スタジアム建設のドキュメンタリー映画「鳥の巣:北京のヘルツォーク&ド・ムーロン」の特別上映会でした。

【ギャラリーツアー】
本展の企画を通してアイ・ウェイウェイと交流を重ねてきた片岡チーフ・キュレーターからは、作品の解説だけではなく、アイ・ウェイウェイの人となりが垣間見られるエピソードが多数紹介されました。

「1立方メートル」「1トン」などの数学的な基本単位と、中国の「伝統」「習慣」などが組み合わされた作品群から展覧会は始まります。形状がシンプルであるが故、見る人の意識を「物の本質」に集中させます。

《1立方メートルのテーブル》2009
《1立方メートルのテーブル》2009
撮影:渡邉 修

2008年5月12日に発生した四川大地震で命を失った子供達への鎮魂歌として作られた作品「蛇の天井」は、約1000個ものリュックサックを繋げて作られています。天井一杯に身をくねらせるような蛇の姿は圧巻!

《蛇の天井》2009
《蛇の天井》(部分)2009
撮影:渡邉 修

花梨の木で作られた高さ3メートル以上の箪笥がいくつも縦に並んでいる作品「月の箪笥」。微妙に位置をずらして開けられている穴を覗くと、まるで月の満ち欠けのように美しく不思議な景色を見ることができます。この穴は数学的な計算に基づいて位置が決められているそう。穴が開けられたことによって、「箪笥」としての機能を失うのと同時に、「アート」としての新たな価値がもたらされています。解説に耳を傾けつつ、みなさんいろいろな角度から覗き込んでいました。

《月の箪笥》2009
《月の箪笥》(部分)2009
撮影:渡邉 修

中国のフォーエバー ブランドの自転車が、繋がって輪を形成している作品、その名も「フォーエバー」。この自転車は、かつての中国人にとっては憧れの的だったそうで、現在多くの人が「良い車に乗りたい!」」と思うように「フォーエバーの自転車に乗りたい!」と願っていたそうです。その後時代は変わり、中国も自動車社会へ変貌した今、この自転車に対する価値も変わりました。

《フォーエバー》2009
《フォーエバー》2009
撮影:渡邉 修

立体作品を作った際の残りの木材(寺院などの古材)を用いて作られた大型作品「断片」は、真上から見ると中国の形をしています。「設計図などは無く、職人の記憶だけを頼りに組立てられた。」という設営時のエピソードも紹介されました。

《断片》2009
《断片》2009
撮影:渡邉 修

この日、最後にご紹介した作品は、アイ・ウェイウェイが2007年の「ドクメンタ12」で、「1001人の中国人を開催地カッセル(ドイツ)へ連れて行く」という大プロジェクトを敢行した際に誕生した、インスタレーション「童話‐椅子」。ドクメンタでは1001脚の清時代の椅子が並べられましたが、本展ではそのうち120脚が展示されています。(一部、監視スタッフの椅子としても使われています。)
今回、映画「鳥の巣」特別上映会は、この椅子を客席にして行いました。
映画では、スイス人である建築家ジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンが、どのように「中国」という文化圏の中で大きな仕事をなしえたか、その過程で起きる軋轢・衝突なども含めて赤裸々に描かれています。プロジェクトに深く関ったアイ・ウェイウェイ自身も多く登場しており、最後はかなり衝撃的な発言で締めくくられますが、ギャラリーツアーで彼の作品と思想に触れた後なだけに、みなさん妙に納得してしまったのではないでしょうか?

映画「鳥の巣」上映会

様々な側面からアイ・ウェイウェイをご紹介した今回のMAMCナイト。それでも3時間のイベントでは、ご紹介し切れなかったこともたくさんあります。
ギャラリーツアー最後の片岡チーフ・キュレーターの言葉通り「一体この男は何者か?何を考え、何処に向かっているのか?そんなことを考えてみつつ、更にこの展覧会を楽しんでいただきたい。」と思います。

文:森美術館 メンバーシップコーディネーター 襟川文恵


PAGE TOP