「小沢剛:同時に答えろYESとNO!」 小沢ワールドへようこそ!

小沢剛は、1987年 から、日本国内をはじめテヘラン、チベット、モスクワ、台北、タイ、韓国などを旅行。各地で手製の小さな地蔵を写真に収めた《地蔵建立》シリーズは、「小沢ワールド」の始まりとなります。その後、日本の貸し画廊システムをユーモラスに批判した《なすび画廊》を開始し、牛乳箱のなかで1990年代の若手アーティストによる展覧会を開催。世界最小の画廊でした。以降、参加者とのコミュニケーションを通して作品が変化する《相談芸術》、醤油で描かれた作品による《醤油画資料館》、世界各地の食材で作った武器を持つ女性の写真《ベジタブル・ウェポン》など、さまざまなシリーズを発表。小さな作品や他者 との交わりを通したプロジェクトは世界各地に広がり、「小沢ワールド」は確実に世界をひとつに繋ぎはじめています。その視点には、高度経済成長期以降の 「昭和の日本」、日本の美術制度のあり方、グローバル時代の個人の立ち位置などに対する、どこか厳しくも暖かい眼差しが感じられます。
本展のタイトル「同時に答えろYESとNO!」は、大江健三郎の「あいまいな日本の私」を想わせます。私たちはみな、どこか白黒つけられない曖昧な部分を持ち合わせているものですが、「同時に答えろYESとNO!」は、小沢自身にもある“はっきりしない部分”をポジティブに捉えなおし、多様な視点や価値観が同時に存在しうることをシニカルかつユーモラスに表現したものです。
現地制作が多く、なかなか国内で見ることのできなかった小沢芸術を、本展ではまとめてご覧いただけます。過去17年間の主要作品に加え、本展のための新作も登場します。観客のみなさんが参加できるワークショップ、トークなどもいろいろ予定しています。小沢剛の作品を通して、1990年代の日本のアートシーン、昭和の風景、そして、個人がこの広い世界とどのようにつきあっていけるのか、そこでアートに何ができるのか、みなさんの想像の世界を多様に広げてみていただければ幸いです。はたして、「YESとNO」は同時に答えられるのでしょうか?