私たちはみな、知っている世界や見えている風景、明らかな権力などに支配されがちですが、計り知れない自然や科学の力、目に見えない感覚や感情、新しい何かを創造する力なども、私たちが生きるためは欠くことのできないものです。現代アートは、しばしば説明のできないこれらのものを体験させたり、見せてくれたりします。それは、世の中の新しい見方や真実を追究する態度を教えてくれるものでもあります。時に不快な印象を受けるのも、社会の表面では隠されているものや、常識的な許容範囲を越えたものを提示することで、見えないものを見せようとしているからだとも言えるでしょう。
私たちを笑わせてくれるユーモアやジョーク、風刺や寓話などにも、これと似た役割があります。笑いは緊張感を緩和し、固定化した考え方や保守的な権力などに揺さぶりをかけ、それが真理であるのかを問いかけます。笑いはきわめて主観的なものでもあり、不快感と隣り合わせでもあります。『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』は、むしろ脇役的な存在であるこの「笑い」の要素を集め、現代アートにある「おかしみ」を通して、作品のメッセージを読み取ろうとする試みです。笑いによって緩和された感受性の扉から、みなさんにはどのような世界が見えてくるでしょうか。
作品をただ笑っていただくもよし、その「おかしみ」の事情を考えていただくもよし。世界中から集結した50名の現代アーティストによる映像、写真、インスタレーションなど約200点。笑いのぎっしり詰まった森美術館をどうぞお楽しみください。
MAM SCREENは森美術館で開催中の展覧会に関連するアート映像を、月替わりで上映します。メトロハットの屋外500インチスクリーンやウェストウォークのPDPモニターなど六本木ヒルズ内各所で、毎日9:30〜23:30、1時間毎に上映。詳細はこちら 「笑い展」に関連した作品を2007年3月まで特集します。
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マット・ジョンソン
《パンの顔》
2004年
鋳造されたプラスチック、油彩
9.5×2×10 cm
Courtesy: The artist, Blum & Poe, Los Angeles and Taxter & Spengemann, New York
ピーター・ランド
《初めての登校》(「はじめての登校」シリーズより)
2005年
水彩、鉛筆、紙
41.5×29.5 cm(×10)
ニコラ・ジャナリア氏蔵、トリノ
Photo: Anders Sune Berg, Copenhagen
Photo courtesy: Galleri Nicolai Wallner, Copenhagen